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第一回鈴鹿工業高等専門学校開発記録

私たちは、世界大会開催可能なサーキットを有する市である鈴鹿市において、モータースポーツの発展を支えてきた地元中小企業は、サーキットの周辺に数多く存在しており、これらの技術を外部に向け広く発信してゆく事は、鈴鹿市の地場産業の活性化に繋がってゆくものであると考えている。

ものづくり支援政策から始まった鈴鹿工業高等専門学校との共同研究。

 

在学中の学生と企業サイドの接点はなかなか生まれないものだが、この支援政策を通じて、ものづくりを学ぶ学生たちとの交流の必要性も感じ、色々な視点から物を見ること、意見を聞ける機会に恵まれた事は、得る事の出来た大きなものの一つだと思う。

開発記録 検討内容、結果についての概要

実験1.はじめに

スイングアームの軽量化と剛性の増加を主目的として、市販バイクの純正部品をベースとした改良に関する検討を行った。検討の流れは以下に示すとおりである。

  1. はじめに純正部品について数値解析(三次元有限要素法)と実験によって応力・ひずみ解析を実施。
  2. その結果を踏まえて改良品を試作・製作。
  3. 改良品を装備した車輌で実地走行試験へ。
 

実験2.数値解析(三次元有限要素法、以下FEMと略す)

図1に市販のバイクの全体図とスイングアームと呼ばれる部品の単体図を示す。

スイングアームとは、バイクフレームと後輪をつなぐ重要なパーツであり、構造上リアサスペンションの一部となる部分である。

図1 市販バイクの全体図と純正スイングアーム
図2は、コンピュータを用いて作成したスイングアームと、応力・ひずみ解析に際して設定した境界条件(支持方法や荷重負荷条件)を示す。
高速でコーナー部分を走行する際にスイングアームが受ける"ねじり"の負荷を想定し、前方のシャフト貫通部分(バイクフレームとリンクする箇所)を固定して、後部の左右の部分(後輪のシャフトが通る箇所)に上下の荷重を与えた(赤色の矢印で表示)。
図2 三次元CADで作成したスイングアームのモデル図と負荷条件
以上のような条件のもとで応力解析を実施した結果を図3に示す。基準色が青色となっており、色の変化によって応力値の大小がわかるようになっている。
なお、ここで表示されている応力は"相当応力σe"と呼ばれる値で、その部分に蓄えられているひずみエネルギにあたるものである。
図3 コンピュータでの応力解析結果
実験3
スイングアームの 14ヶ所に三軸ひずみゲージを貼り付け、ねじり試験機によってトルクを与えてひずみを測定した。
ひずみゲージを貼り付けた場所、ならびに実際のねじり試験のようすを、それぞれ図4、図5に示す。
 
図4 ひずみゲージの貼り付け位置
図5 実際のねじり試験のようす
 
 
図6は、A~Nの14ヶ所のそれぞれにおいて測定された三方向のひずみ、εx、εy、ε45より主応力σ1、σ2を求め、相当応力σeを計算した結果である。
図6 実験によって得られた応力結果

実験4.結果を踏まえた改良品の試作

図3に示したFEM解析結果、ならびに図6に示した実験結果からわかるとおり、両者の結果は非常によく一致している。

従って、FEM解析は忠実に実際の負荷状況を再現しており、今後の検討において非常に有効なツールとなるといえる。

これらの結果より、応力は以下に示す部分に集中していると考えられる。

a.スイングアーム左右側面上部の細いアームの付け根部分(図4のひずみゲージ貼り付け位置の B点、I点、N点付近)

b.スイングアーム前部と、フレームリンク用ボスとの接合部分(図4のD点、K点付近)

c.スイングアーム全部の開口部周辺部分(図4のM点、L点付近)

 

これらの結果を考慮して改良を施したスイングアームを図7に示す。

図7 改良型スイングアーム
 
図7からわかるとおり、改良点の主なものは次のとおりである。
a.スイングアーム左右側面の開口部をなくして、全体の剛性を高めた。
b.スイングアーム前部と、フレームリンク用ボスとの接合部分に、補強パーツを溶接して剛性を高めた。
c.上記の剛性増加に伴い、純正品で大きく立ち上がっている部分(図4のB点、I点、N点付近)をそぎ落として流線型とし、軽量化した。
 
 

実験5.まとめ

改良型スイングアームの定量的な評価については、現在鈴鹿工業高等専門学校機械工学科において実証中であるが、レースにおけるタイムの向上やライダーとしての感触からその有効性を確信している。

(有)オオニシ ‐ ヒートマジック
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